更新日 2025/4/20
「フレイル・ロコモ対策会議」の活動のひとつとして刊行された書籍で,フレイル・ロコモの基礎的内容から応用的内容まで,領域横断的に幅広く解説がなされている.
全7章で構成され,第1章はフレイル・ロコモの概念や疫学,第2章は老化に伴う臓器の機能低下とフレイル・ロコモとの関連性,第3章はフレイル・ロコモに関する基礎医学的知見・ロボット技術・ICT・IoTなどの先端技術,を概説している.第4章はフレイル・ロコモの予防と介入について,運動,栄養,社会活動の観点からの方法論について概説しているだけでなく,医療現場,介護現場,自治体事業などさまざまな現場における予防や介入についても触れられており,フレイル・ロコモの予防や介入を幅広い視点でとらえることに役立つかもしれない.
第5章は,臓器別に疾患とフレイル・ロコモとの関連が概説されている.また,第6章では,高齢者に起こりやすい,排尿・排便障害,褥瘡,転倒,視覚障害,難聴などの問題についても触れられている.第2章,第5章,第6章は,医学系研究者や高齢者の診療に携わる医療従事者において,研究や日常診療において参考になるかもしれない.
第7章では,フレイル・ロコモ対策における包括的ケアについて概説され,緩和ケアについても触れられている.フレイル・ロコモを有する高齢者の緩和ケアについては今後の発展が期待される.本書は,医学的観点からの解説が多く,介護福祉領域における活用には限界もあるように感じる.しかし,すべての医療従事者がフレイル・ロコモに対する知識をもって高齢者のケアにあたることは重要なことであり,本書がさまざまな領域の医療従事者がフレイル・ロコモに注意を向けるきっかけになることを期待したい.