論文名 | 高齢者のウェルビーイングの時代的変化;JAHEAD/NSJEからのエビデンス |
著者名 | 中川 威 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年社会科学,46(4):374-380,2025 |
抄録 | 老年学者は,人がどのようにうまく歳を重ねていくかという問いに関心をもち,高いウェルビーイングを経験していることをサクセスフル・エイジングと捉えてきた.本稿では,高齢者のウェルビーイングの時代的変化に関する既存の知見を概観した.先行研究では,最近の高齢者では,ひと昔前の高齢者に比べて,ウェルビーイングが向上していることが示唆されている.ただし,先行研究の課題として,繰り返し横断研究のデータが用いられていること,ドイツやアメリカといった西欧諸国で主に実施されていることが挙げられる.これらの課題を解決するため,日本の高齢者を対象とする縦断研究であるJAHEAD/NSJEのデータを用いた.前期高齢期における知見とは逆に,後期高齢期ではウェルビーイングが時代につれて悪化していることが示唆された.今後,高齢者のウェルビーイングの時代的変化の原因を特定することで,政策への具体的な示唆を得られるだろう. |
キーワード | 出生コホート,世代差,歴史的影響,縦断,時代的推移 |
論文名 | 高齢者の貧困の時代的推移 |
著者名 | 四方理人 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年社会科学,46(4):381-388,2025 |
抄録 | 本稿では,1985年から2018年までの高齢者の相対的貧困率の変化,および公的年金の財政検証と世帯の将来予測からみた高齢者の貧困率の今後の動向について考察を行った.高齢男性と比較して,高齢女性の貧困率が低下しなかった理由は,3世代同居の減少による単独世帯の増加により死別高齢女性の貧困率が上昇したことによる.そして,公的年金の財政検証における過去30年と同様の経済成長率を前提としたケースでは,今後,実質的に基礎年金額が低下することが予測されている.また,男性の平均手取り賃金に対するモデル年金額の水準である所得代替率が現在より10%以上低下することからも,高齢者の相対的な年金収入は低下し,相対的貧困率が上昇することが考えられる.加えて,世帯の将来推計においては,高齢女性において,死別より貧困率が高い未婚と離別の割合が上昇する.同時に,高齢者における単独世帯の割合が男女ともに上昇することが予測されており,家族に頼ることができない高齢者が増加するため,貧困問題がより顕在化するだろう. |
キーワード | 相対的貧困率,公的年金,世帯構造,生活保護 |