| 抄録 |
わが国は世界に先駆けて超少子・超高齢社会へと移行し,団塊の世代が75 歳を迎える現在,地域社会のつながりの希薄化や働き盛り人口の減少に伴う支え手不足が大きな課題となっている.こうした状況においては,高齢者自身が健康を維持・増進しながら役割をもち,地域社会の担い手として活躍する「自助・互助」の仕組みを再構築することが不可欠である.しかし令和5 年度高齢社会対策総合調査によれば,地域活動に参加していない高齢者は約4 割に上り,その層の約4 割が生きがいを感じていないことも報告されている.長寿が当たり前となった現代においても,「長寿をすなおに喜べない人々」が一定数存在するという現実が示唆されている.
一方で,少子化と寿命の延伸はわれわれに新たな社会像を求めている.人生100 年時代には,従来の「教育・労働・余生」という3 段階の人生モデルに代わり,各世代が相互に学び合い支え合う新たな関係性の構築が求められる.高齢者が地域で生きがいをもち積極的に関わることは,本人の幸福感の向上のみならず,他の年代にとっても安心や共感をもたらし,互いに歓迎されるかたちで社会参加が循環する基盤となる.
本特集のもととなった老年社会科学会第67 回大会(2025 年)のシンポジウム「長寿を喜ぶ・喜ばれる多世代共生社会の実現を目指して;挑戦と展望」では,多世代共生をテーマに研究・実践を重ねてきた3 人のシンポジストを招いた.まず倉岡正高先生には,多世代共生の意義と歴史的経緯,国内外の実践事例について概観いただいた.次いで宇良千秋先生には,農園を活用した実践的研究から,多世代の交流が生み出す新たなコミュニティ形成の可能性を示していただいた.さらに,杉啓以子先生には多世代型施設における取り組み事例を通じ,共生を日常的に体現する場づくりの実際を共有いただいた.
各講演を踏まえ,本特集では「長寿を喜ぶ・喜ばれる社会」を実現するための具体的な知見とヒントを探り,多世代が共に活躍し支え合う未来社会の姿について検討を深める.
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